福岡近郊の混雑緩和へ「813系」をロングシート化 定員90名増 “座席撤去”から方針転換

JR九州は、福岡近郊を中心に運行している主力車両の「813系」について、混雑率を緩和するため車内のクロスシートをロングシートに改造する工事を実施します。

混雑率緩和のため全編成にロングシート化工事が施工されるJR九州813系電車(ninochan555/写真AC)
混雑率緩和のため全編成にロングシート化工事が施工されるJR九州813系電車(ninochan555/写真AC)

“座れない”と不評だった「一部の座席撤去車」

1994年(平成6年)に運行を開始した813系は、鹿児島本線、長崎本線、日豊本線、筑豊本線・篠栗線(福北ゆたか線)と福岡・北九州都市圏輸送を担う多くの線区で走行しています。3両編成が82本、計246両が在籍するJR九州の近郊型車両では最大勢力、つまり平均して来る確率が高い車両と言えます。

813系の座席は登場当初から、前または後ろ向きで座れるクロスシートに統一されていました。横向きに座るロングシート車に比べて着座時の快適性で勝る反面、通路幅が狭く、扉付近に利用者が滞留して乗降に時間がかかる弱点も兼ね備えていました。

この問題を解決するため、一部の座席を撤去する改造を受けた編成が2021年3月から運行を開始しました。扉部分のスペースが拡大して輸送力増強には貢献したものの、1編成全体の約3割に相当する48席もの座席を撤去したため着席できる機会が大幅に少なくなり、利用者から日常的に座れなくなったことに対する苦情が増えていると西日本新聞が伝えていました。

(JR九州813系クロスシート車両、ロングシート車両と一部座席撤去車両の座席レイアウトなど詳細は下の図表を参照)

【図表で解説】JR九州813系クロスシート車両、ロングシート車両と一部座席撤去車両の座席レイアウト

クロス→ロングで座席数は変わらず

今回、発表されたロングシート化工事は、扉間に設置されているクロスシートをすべてロングシートに取り替え、連結面のボックスシートのみをそのまま残すという内容です。1編成あたりの座席数はロングシート120席、ボックスシート28席となり、オリジナル編成から座席の数に変わりはないとのことです。定員数はクロスシート編成よりも90名増加し、混雑緩和が図れるとしています。

工事は813系の全246両に施工され、2023年12月以降に順次運用が開始されます。すでに一部座席を撤去した車両も対象に含まれ、これらの車両ではロングシート化により48席分の座席が回復することになります。全編成への改造は2028年度に完了する予定です。

混雑緩和という目的は共通ですが、これまでの着席機会を犠牲にした座席撤去ではなく、座席の形態を変更して着席数を確保しながら定員を増やす手法に切り替えます。利用者の声を反映した方針転換であるかどうかJR九州は明言していませんが、車両数を増やすことなく、サービス水準をできるだけ維持しながら通勤・通学輸送をやり繰りしたい同社の苦心が透けて見えます。

なお、JR九州の近郊型車両では811系と817系でもクロスシートからロングシートに改造する工事が進んでおり、電化区間の普通・快速列車でクロスシートに座って移動できる機会は今後数年で大幅に減ることになりそうです。

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